クールな王太子の新妻への溺愛誓約
ベティが手を前で組んで頭を下げると、レオンは穏やかな笑みを返した。
その表情にもベティは面食らってしまう。何度か見かけたことはあったが、面と向かって笑顔を向けられたのは初めてだ。
レオンはベティの前を通り過ぎ、マリアンヌへと歩み寄った。
マリアンヌは咄嗟に姿勢を正す。
「マリアンヌ、夕食の準備ができたそうだ。一緒に行こう」
「……はい」
レオンが手を差し出すと、マリアンヌは戸惑いながらも手を重ねた。
チラッと横目に見たベティが目を丸くしている。ピエトーネへ向かう前のレオンと同一人物かと、自分の目を疑っているようにも見えた。
それはマリアンヌ自身も同じ。ピエトーネへ向かう時もマリアンヌを気づかう様子は時折見られたが、帰る馬車の中でのレオンは、それとは比にならないほどだった。
マリアンヌの手はレオンにずっと握られたまま。注ぐ眼差しは、マリアンヌが照れて俯きたくなるほど熱く。
おかげでマリアンヌは、終始ドキドキしっぱなしだった。
周りの目を気にせず躊躇わずに彼女に触れるものだから、レオンの突然の“変異”に侍従や護衛の者たちも動揺するほどだ。