クールな王太子の新妻への溺愛誓約

いつもは侍女たちの仕事だったが、レオンがマリアンヌに椅子を引く。
マリアンヌは周りの視線が気になりながらも、「ありがとうございます」と腰を下ろした。

食事の最中も、マリアンヌに向けられる優しい眼差し。時折こぼれる笑み。それは、今までのレオンからはとうてい考えられないものだった。


「バラ園へ行こう」


レオンから誘われたのは、食事を終えて部屋へ戻ろうという時だった。
ここへ来たばかりの頃に行ったきり。マリアンヌはふたつ返事で頷いた。

満月の庭は、思ったよりも明るい。レオンに腰を抱かれて歩くマリアンヌは、次第に強くなるバラの香りに鼻からいっぱいに息を吸い込んだ。高貴な香りが胸に広がる。
月に照らされたバラのアーチが幻想的だ。

マリアンヌが思わず「綺麗」と呟くと、レオンがその横顔を見て微笑む。


「クレアは、ここのバラが好きだった」


その時の記憶はないが、マリアンヌもピエトーネにいた頃は母の大切にしている花たちが咲き誇る場所で過ごす時間が好きだった。そこでベティに紅茶を淹れてもらい、ゆったりと流れる時間に身を委ねたものだ。

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