クールな王太子の新妻への溺愛誓約
蘇る記憶
レオンから森へ行こうと誘われたのは、ドレスの試着から一週間ほど経った朝のことだった。
政務が休みの貴重な日。マリアンヌはレオンを休ませてあげたかったが、レオンは『約束したじゃないか』と言い張るばかり。どうもレオンは、約束に関しては相当厳しい考えを持っているようだ。
バラ園で棘を刺した時に断片的に戻った記憶は、それきりなんの兆候も見られない。このところ籠っていた王宮から出ることで、記憶が戻ることになんらかのきっかけになるかもしれないと、マリアンヌは考え直した。
「マリアンヌ、準備はできたか?」
「はい」
部屋に迎えに来てくれたレオンと連れ立って宮殿を出る。
マートひとりが護衛として一緒に行くそうだ。これには侍従たちが反対したそうだが、せっかく静かな場所へ行くのに大人数では行きたくないというレオンの強い希望があった。
それでも最初はマリアンヌとふたりきりで行きたいと言っていたことから比べれば、譲歩した方じゃないだろうか。
ベティは心配でたまらないといった様子で最後まで粘っていたが、レオンに逆らえるはずもない。『くれぐれもよろしくお願いします』と何度もレオンとマートに上申していた。