クールな王太子の新妻への溺愛誓約
とはいえ、街よりも近い場所なのだ。そこまでの心配は無用だ。
マートが御者台で手綱を握り、馬車がゆっくりと進み始める。
レオンはいつものようにマリアンヌの手を握り、それを自分の膝の上に置いた。
「森へはどれくらいぶりですか?」
「随分行っていないな。マリアンヌがフィアーコに来る以前だ」
「どんなところなんでしょう。とても楽しみです」
マリアンヌが嬉しそうに笑うと、「マリアンヌを連れていけて、私も嬉しいよ」とレオンも笑った。
ほどなくして馬車が止まる。目的の場所に到着したようだ。
レオンに手を引かれて馬車を降りた途端、マリアンヌが「わぁ」と声を上げる。目の前に湖が広がっていたのだ。エメラルドグリーン色をした湖面が、太陽の光でキラキラしている。その眩しさに目を細めた。
王宮からそれほど離れていないのに空気が澄んでいるように感じるのは、たくさんの木々と水のおかげなのか。とても清々しい気分だ。
それと同時に、どこかで見たことのある光景だと感じた。