クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「は!」
マートは背筋をピンと伸ばし、右手を上げて敬礼する。
マリアンヌたちは、水辺に沿ってゆっくりと足を進めた。
時折、水面に顔を覗かせる魚たち。水鳥たちが翼をはためかせて飛び立つ。
静かに流れる時間がマリアンヌの心を穏やかにしていく。なによりもレオンにつながれた手の温もりがマリアンヌを安心させた。幼い頃にも、きっとこうしてレオンに手を引かれて歩いたのだろう。
レオンの横顔越しに見える景色に見覚えがあるのは、思い出したいというマリアンヌの願望が思わせるのか、それとも実際に覚えているのか。マリアンヌにはまだわからなかった。
ただ、ここにいることで心がとても平穏になる。レオンのそばにいること。それはなににも代えがたいことだと心の底から思った。
しばらく散策を楽しんだ後、マートの待つ方へと戻る。
「お茶にいたしましょうか」
マートが馬車から大きな藤のカゴを取り出した。ベティから預かってきたらしい。
草の上にシートを敷き、レオンとマリアンヌが腰を下ろす。