クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「私が準備します」
マートが紅茶を淹れようとしていたので、マリアンヌは横からティーポットを奪った。
「いえ、ですが」
「大丈夫よ。マートは紅茶を淹れたりしないでしょう? 私もいつもベティに淹れてもらってばかりだけど、マートよりはおいしく淹れられるはずだわ」
おどけて言いながら、マートもシートに座るよう促した。
最初こそ渋っていたマートも、レオンから「いいから座れ」と言われ、「失礼します」と恐縮しながら靴を脱いでシートに上がった。
ポットにお湯を注ぎ、茶葉をじっくりと蒸らす。それから温めておいたカップにそっと注いだ。ベティがやってくれたのを見よう見まねで実践する。
小さなガラス瓶に入っていた薄紅色の花びらは、レオンが大事にしているバラだ。それを数枚ずつカップに浮かべ、レオンとマートに「どうぞ」と手渡した。
「おいしい」
ふたりの口から同じセリフが漏れる。