クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「本当ですか?」


マリアンヌが喜びに手を叩いた時、ふとあるワンシーンが思い出された。
『おいしい』と笑うレオンを見て、無邪気に笑う幼いマリアンヌ。レオンは、バラの花びらを浮かべたティーカップを持っていた。

ずっと以前から、こうして花びらを浮かべて紅茶を飲んでいたのか。

一時停止ボタンを押したかのように動きの止まったマリアンヌを見て、レオンが「マリアンヌ?」と声をかける。


「……あ、はい」

「どうしたんだ」


そう問われて、「いえ、なんでもありません」と首を横に振った。

マートには、マリアンヌがタカマッサのクレアだと明かしていない。その彼を前にして、“記憶”の話をすることはできないと思ったからだ。

レオンは目を細め、探るようにマリアンヌを見つめた。マリアンヌがなにか思い出したことを察したのかもしれない。
その目に気づいたマリアンヌもレオンの視線の意味に気づき、軽く頷くことでサインを送った。


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