クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「堅苦しい挨拶はそこまでにしようじゃないか。婚礼の儀はまだ少し先だが、我が息子レオンの妻、つまり私の娘となるのだから」
【フィアーコ王国】の国王ジャンピエトロが王座で鷹揚な笑みを浮かべる。
マリアンヌは「望外の喜びに存じます」と再び膝を折り曲げ、愛らしく目線を下げた。
そして再び顔を上げ、王座から左右へ視線を振る。
マリアンヌが嫁ぐことになっている王太子レオンの姿がどこにもないようだった。ジャンピエトロと、その妻である王妃のマティルダのほかには侍従や侍女しか見えない。
マリアンヌの視線に気づいたのか、ジャンピエトロが側近と思われる人物に「レオンはまだか」と尋ねる。
「申し訳ございません。間もなくこちらへ……」
側近が恐縮しながら答えるが、レオンの姿が現れる気配はなかった。
ここフィアーコは大陸で一、二を争う大国だ。周りを山と森で囲まれ、川の恩恵により広大な土地は肥沃。それにより農業が盛んであるばかりでなく、領地には金が発掘できる鉱山も持っている。食べ物に困ることがなければ、金の貿易収入によりお金にも困らない。