クールな王太子の新妻への溺愛誓約
マリアンヌは笑顔を浮かべて首を横に振った。
「ねぇ、レオン様のバラ園はどちらなの?」
零れそうになった涙は寸でのところで引っ込めた。
(悲しんでいる場合じゃないわ。私は、ここピエトーネへ嫁ぐのよ。空想の中で恋焦がれたレオン様と幸せになるために)
ベティも笑みを浮かべながら「こちらでございます」とマリアンヌを先導した。
歩みを進めるごとにバラの香りが強まっていく。バラ園はもうすぐのようだ。マリアンヌは、心を躍らせながら足を進めた。
しばらくすると、ベティが「着きました」と手を掲げる。
入口と思われる鉄製のアーチには薄紅色のノアゼットが巻きつき、美しいアーケードを作っている。そこをくぐるとセンティフォーリア、ダマスク、ブルボンローズ、チャイナと、中はさらに色とりどりのバラが咲く。
「わぁ、すごい」
マリアンヌは思わず幼い少女のように声を上げた。
ピエトーネでもバラは今が咲きごろだった。ここフィアーコも同様らしい。
息を吸うと、甘い香りで胸が満たされる。