クールな王太子の新妻への溺愛誓約
それだけで幸せな気分だ。
そうして何度となく深呼吸を繰り返していると、ふと足音が近づいてくる気配がした。そちらへ振り返ったマリアンヌは、姿を現した人物に鼓動が弾む。レオンだったのだ。
「――レオン様! こ、こんにちは」
ドレスを摘まみ、膝を折る。
レオンは昨夜同様にマリアンヌを冷めた目で見つめ、「どうしてここに」と冷ややかな口調で言葉を放った。
明らかに拒絶されている。昨夜はたまたまつれない態度だったのだろうと思っていたマリアンヌは、そこでぐっと言葉に詰まってしまった。
「申し訳ございません。私がこちらへご案内いたしました」
ベティがすかさずマリアンヌの前に跪き、頭を垂れる。
彼女が代わりに口を開くと、レオンはその涼やかな目をベティへと向けた。
「――いえ、案内してほしいとお願いしたのは私なのです。お気に障ったのでしたら申し訳ございません」
ベティが叱責されてはかわいそう。