クールな王太子の新妻への溺愛誓約
呆れるようにベティがこぼしながら、クレアにドレスを着せていく。
しかし大きな鏡の中で目の合ったベティは、呆れ顔どころか困った表情も浮かべていない。優しく穏やかな眼差しでクレアを見つめていた。
「クレア様、この度は本当におめでとうございます」
「ありがとう、ベティ」
「数々の困難があったというのに、こんなに真っ直ぐ健やかにお育ちになられて……」
急に込み上げるものがあったのか、ベティは目頭を押さえた。
「やだ、ベティったら泣かないで」
傍らに置かれたワゴンからハンカチを取り、クレアがベティの涙を拭う。
「……申し訳ありません。つい……」
そう言って鼻をすすった。
クレアの胸にも去来するものがある。
ピエトーネでの日々は、ベティの存在なくして語れるものではない。クレアのそばに控えていたのは、いつだってベティだった。