クールな王太子の新妻への溺愛誓約

そうなると当然ながら、武器や兵の調達が安易になることから軍事力も強大。大陸の諸国から一目置かれた国である。

十年前まで動乱の最中にあった大陸は、圧倒的兵力を誇るフィアーコの力により現在は平穏を保っている。

マリアンヌはその王太子であるレオンとの婚礼のため、隣国のピエトーネよりやってきていた。
ピエトーネは湖のほとりにあり、農業を主としている緑豊かな小国だ。自国で採れた作物を近隣の国に売ることで得たわずかな金銭で、細々と成り立っている。

そんな小国の王女でありながら大国の王太子との縁談がまとまった背景には、ピエトーネで近年発見された鉱山の存在があった。

その山から鉄が発掘されたのは二年前のこと。それにより近隣諸国が浮足立ったのは言うまでもない。武器はもちろんのこと農耕器具の材料ともなる鉄は、非常に貴重なもの。
多くの国がその鉱山目当てにピエトーネと友好関係を築こうと、王女であるマリアンヌの争奪戦が始まった。それにはピエトーネよりも小さな国はもちろん、海を隔てた別大陸の国も手を挙げた。

マリアンヌの父であるピエトーネの国王アンニバーレは、二年近くもの長きに亘って婿選びに思案していたが、中途半端な規模の国と友好関係を築くより、多くの財を持つ安定したフィアーコがいいだろうと決断したのだ。
娘を手離す寂しさから結婚適齢期の終盤にさしかかる十九歳までマリアンヌを手元に置いていたアンニバーレも、相手がフィアーコならば願ったり叶ったり。

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