クールな王太子の新妻への溺愛誓約

マリアンヌは瞬きも忘れて、その光景を見つめていた。

しばらくそうしていると自然と部屋の外へと足が向く。もっとそばで見たいと思ったのだ。
冷たい回廊を足早に進み、宮殿の外へと出る。するとマリアンヌに気づいた相手の男は、恐縮したようにレオンとマリアンヌにそれぞれ一礼し、その場を去ってしまった。


「……申し訳ありません。邪魔をするつもりはなかったのですが……」


マリアンヌはただそばで見たかっただけなのだ。

レオンは剣を鞘に納め、「なにをしにきた」と平坦な声で言った。

マリアンヌは、もう一度『すみませんでした』と謝って逃げ出したい気持ちだったが、そこは踏ん張った。いつもは言葉もかけてくれないレオンが、内容はどうであれ声をかけてくれたのだから。

それに結婚が国益のためなのは、少なからずマリアンヌも同様。マリアンヌ自身にも母国ピエトーネを守る使命があるのだから。

今は安泰な大陸だが、鉱山を狙う他国がいつピエトーネに戦を仕掛けるかはわからない。それに対抗する兵力は、ピエトーネにはないに等しい。フィアーコの後ろ盾があってこその平和なのだ。

< 30 / 286 >

この作品をシェア

pagetop