クールな王太子の新妻への溺愛誓約

◇◇◇

翌日。待ちに待ったレオンとの夕食の前に湯浴みをしようと、ベティと侍女パトリシアが手伝ってくれることになった。

美しい黒髪が印象的なパトリシアは、マリアンヌよりひとつ年下の十八歳。薄っすらと赤く染まった頬は色白の顔をより白く見せ、目鼻立ちの可憐なかわいらしい女性だ。

ふたりがマリアンヌの体を洗ってくれている時のことだった。


「マリアンヌ様、その腕の傷はどうなさったのですか?」


パトリシアは、マリアンヌの左腕に五センチ四方に広がるケロイド状の痕を見つけた。


「あぁ、これ? これはね、小さい時に火傷を負ったらしいの」

「火傷でございますか。それはお可哀想」


パトリシアの目が悲しそうにしぼむ。


「とても痛かったのではないですか?」

「そうね、どうだったのかしら。ベティ、その時のことを覚えてる?」


実はマリアンヌには、幼い時の記憶がないのだ。

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