クールな王太子の新妻への溺愛誓約
確かに、あの美しさには人を怯ませる凄みがある。
冷ややかな眼差しを思い出しただけで、マリアンヌは背筋がピンと伸びてしまう。今も頭のてっぺんを糸で引っ張られたように姿勢が良くなってしまった。
「でもレオン様は、いったいどうして笑わないのかしら……」
マリアンヌは顎に人差し指を添え、ひとり言のように呟いた。
一度も笑ったことのない人は、この世にきっといないだろう。それならば、笑わなくなったきっかけがあるに違いない。
「ねぇ、ベティ、レオン様がいつから笑わなくなったのか聞いた?」
ベティの目に躊躇いの色が滲む。言うべきか言わざるべきか、迷っているようだった。
「なにを聞いても驚かないから、知っているのなら教えて」
マリアンヌは食い下がった。
笑わないということだけで、もう十分驚いた。それ以上の話はないだろう。
そう言われたベティは、覚悟を決めたように顎を引いて目線を上げる。