クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「レオン様には幼い頃、国王陛下のお決めになった許嫁のお方がいらっしゃったそうです」
「……許嫁の方が?」
ベティが言い淀んだのは、マリアンヌ以外にそういった相手がいたからだったようだ。
フィアーコの歴史については学んだが、それに関してマリアンヌは初耳だった。そういったことに関して、国が情報を葬ったのかもしれない。
「その方はどうされたの?」
「お亡くなりになられたそうです」
「亡くなった……?」
マリアンヌは口もとを手で押さえた。
まさかそうくるとは思わなかった。国の事情が絡み、結婚がなくなったのだろうと想像したからだ。
ベティが言うことには、その許嫁は隣国のタカマッサの王女だったそうだ。タカマッサはフィアーコによって統一され、現在はフィアーコの一部となっている。
七年前の当時、タカマッサとフィアーコは友好関係にあり王家同士の関係も密で、五歳年下の幼い王女のことをレオンが妹のようにかわいがっていたとのこと。その王女もレオンを慕い、レオンが二十歳を迎える年に婚礼の儀を執り行うことになっていたらしい。