クールな王太子の新妻への溺愛誓約

ところが、国王一家が馬車を走らせている最中に盗賊に襲われ、不幸にも三人とも命を落としてしまったそうだ。

レオンが笑わなくなったのはそれが原因なのかもしれないと、ベティはここに古くからいる侍女から聞いたらしい。

マリアンヌは胸が痛かった。そんなにつらい過去があるとは思いもしなかったのだ。大切な人を亡くした経験はマリアンヌにはないが、その気持ちは察するにあまりある。


「それでレオン様はお心を閉ざされてしまったのね……」


ポツリと呟くと、ベティも沈痛そうな面持ちになった。
笑えなくなってしまうほどなのだから、相当な心労になったのだろう。


「それじゃフィアーコに来た私の第一の仕事は、レオン様のお心を開くことね」


マリアンヌは暗い表情から百八十度転換。パッと華やぐような表情で言うと、ベティもそれにつられるようにして柔らかく笑う。


「そうですね。マリアンヌ様なら、きっとおできになれると存じます」

「ありがとう、ベティ」


小首を傾げて微笑むマリアンヌは、とても慈愛に満ちていた。

< 43 / 286 >

この作品をシェア

pagetop