クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「早く国民のみなさんと仲良くなりとうございます。ピエトーネでは――」
「街へは行かない」
レオンがマリアンヌを遮る。
「……はい?」
弾んでいたマリアンヌの声が小さくかすれる。笑顔を貼り付けたまま、目を丸く見開いた。
ピエトーネでは、王族は国民あってのものだと開かれた王宮を目指していた。国民との触れ合いをなによりも大切にしてきたのだ。
固まってしまったかのようなマリアンヌに、レオンの涼やかな眼差しが注がれる。感情のいっさいがないような瞳だった。美しい光彩を放っているのに、そこになにも感じられない。
「私は行かない」
レオンはもう一度言って手元の皿に目線を落とし、フォークとナイフでうさぎの肉を切り分け始めた。
マリアンヌはそこで忙しなく瞬きを繰り返す。
(レオン様は、あまり国民とかかわりを持ちたくないのかしら……)