クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「早く国民のみなさんと仲良くなりとうございます。ピエトーネでは――」

「街へは行かない」


レオンがマリアンヌを遮る。


「……はい?」


弾んでいたマリアンヌの声が小さくかすれる。笑顔を貼り付けたまま、目を丸く見開いた。

ピエトーネでは、王族は国民あってのものだと開かれた王宮を目指していた。国民との触れ合いをなによりも大切にしてきたのだ。

固まってしまったかのようなマリアンヌに、レオンの涼やかな眼差しが注がれる。感情のいっさいがないような瞳だった。美しい光彩を放っているのに、そこになにも感じられない。


「私は行かない」


レオンはもう一度言って手元の皿に目線を落とし、フォークとナイフでうさぎの肉を切り分け始めた。

マリアンヌはそこで忙しなく瞬きを繰り返す。

(レオン様は、あまり国民とかかわりを持ちたくないのかしら……)

< 47 / 286 >

この作品をシェア

pagetop