クールな王太子の新妻への溺愛誓約
レオンの考えが全く読めない。
「……あの、では私が街へ行くこともダメでしょうか」
レオンは顔を下へ向けたまま、上目づかいでマリアンヌを見た。
睨まれたように見えた視線にマリアンヌが委縮する。いけないことを言ってしまったかと、すぐに後悔が襲った。
ところがレオンは「好きにするがいい」と、今夜の食事を誘った時と同様に答えた。
マリアンヌはレオンに気づかれないように小さく息を吐き出してから、「ありがとうございます」となんとか笑顔を浮かべた。
それからの時間は、どうしたらレオンとの会話が弾むのかマリアンヌにもわからず、黙々と食べるばかり。侍従や侍女たちも、どことなくハラハラするようにふたりを見守っていた。
(やっぱりコルセットがきつすぎたみたいだわ)
いつも以上にきつく締め上げられたウエストライン。マリアンヌは自分の額に脂汗が滲んでいることに気づいた。だんだんと呼吸が浅くなってくる。
(……レオン様が退席するまでは、なんとかこらえなくちゃ)
笑顔を浮かべながらもナイフとフォークを置き、ぶどうジュースで喉を潤す。
そうしてもなお額の汗は増えるばかり。ハンカチでそれを拭いながら、笑顔が崩れそうになる。
そうして具合の悪さを懸命に我慢していたマリアンヌは、目を閉じた次の瞬間、椅子の上から崩れ落ちた――。