クールな王太子の新妻への溺愛誓約

(いったいどんなお方なのかしら……)

結婚が決まってからというもの、どんな人物だろうかとあれこれ想像し、マリアンヌはこの日を心待ちにしていた。フィアーコのことは大急ぎで学んだが、肝心な王太子の人となりに関しては二十四歳という年齢以外の情報が入らなかった。そのためマリアンヌは想像で人物画を描き、それを寝室に飾っていた。

その彼と、ようやく会える。

マリアンヌの鼓動は、それ以上速く打ち付けられないほどになった。

足音がさらに大きくなる。

マリアンヌは、呼吸すらうまくできていないことに気づかずに固唾を飲む。そして、王太子レオンが堂々とした様子でその場に姿を現した瞬間、マリアンヌは雷にでも打たれたかのような衝撃を受けた。

(……嘘でしょう……?)

想像にも増した美麗な姿だったのだ。

目の覚めるようなインディゴブルーのジェストコールには繊細な金糸の刺繍が施され、ベージュのジレもまた同様だった。すらりと伸びた手足。身長はおよそ百八十センチ。
漆黒の髪は艶めき、眉間からすっと伸びた意志の強そうな眉、コバルトブルー色の瞳は静かな水をたたえた湖面のよう。通った鼻梁に薄い唇。

全体的にシャープな印象の顔立ちは、マリアンヌの心をかき乱した。

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