クールな王太子の新妻への溺愛誓約

ゆっくり足を進めて近づくと、ふっと音が止んだ。
マリアンヌもハッとして、その場で歩みを止める。パイプオルガンを弾いていたのはレオンだったのだ。椅子に座らず立ったまま。夜の静けさの中であっても凛とした姿は健在。
マリアンヌはその美しさに見惚れた。

(本当にお美しい……)

マリアンヌがボーっと見つめていると、レオンが振り返る。鋭い目が一瞬だけ見開かれた。


「あ、あの、音が聞こえたので、どこで誰が弾いているのかと……」


まさかレオンだったとは思いもせず、マリアンヌが動揺しながら言う。


「こんな夜更けに、女がひとりで出歩くものじゃない」


冷たい言い方だったが、自分を心配して言ってくれたのだと解釈して、マリアンヌはなんだか嬉しかった。


「ご心配してくださり、ありがとうございます」


ドレスを摘む仕草をしたところで、自分がナイトウエアだったことを思い出した。羽織っていたものを胸元で慌ててかき合わせる。

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