クールな王太子の新妻への溺愛誓約
(こんなに美しい王太子がいるなんて……)
マリアンヌは呆けたように見惚れてしまった。
「レオン、ピエトーネの国王陛下を待たせるとは失礼だぞ」
ジャンピエトロに注意され、「申し訳ありません」とレオンが謝罪する。その目がマリアンヌへ向けられ、彼女は急いでドレスの裾を掴んだ。
「ピエトーネより参りましたマリアンヌ・アルバーニ・ファロンです。お会いできて光栄です」
国王への挨拶同様に膝を折り曲げる。足が震えているのは自分でもわかった。
ところがそんな彼女に向けられたのは、レオンの冷めた目だった。
(……どうしたのかしら。どこか具合でも悪いのかしら)
どうしたらいいのかわからずにマリアンヌがその体勢のままでいると、再びジャンピエトロから「レオン」と声がかかる。さきほどよりも低い声だ。
それに促されるように「レオン・タンディ・ミケランジェリです」と、彼は顔色も変えずにようやく名乗った。ヒヤリとするほどに淡々とした口調だった。まるで面でも付けているのか、表情は一ミリも変わらない。