クールな王太子の新妻への溺愛誓約

「とんでもないことにございます!」


マートは必死に首を横に振った。


「その逆でございます」

「逆?」

「とても愛くるしく、美しいお方だと」


突然の誉め言葉にマリアンヌはポカンとしてしまった。そんなふうに言われたのは初めてだったのだ。

両親から『かわいい』と言われたことは確かにある。だがそれは身内の欲目だろう。王宮に仕えている人からは、そのような言葉をかけられたことはない。ベティだって同じだ。『王女は王女らしく』と厳しく言われることはあっても、容姿に関して誉められた記憶はなかった。

ということは、マートの言ったことはただの社交辞令だろう。鵜呑みにするのは危険だ。


「お気遣い、ありがとうございます」


そう言ってマリアンヌが目線を下げると、マートは「あ、いえ、気遣いとかではなく……」と困ったようにあたふたした。

ふたりのやり取りをそばで見ていたベティが、そこで「コホン」と咳ばらいをする。

< 69 / 286 >

この作品をシェア

pagetop