クールな王太子の新妻への溺愛誓約
マートはそこで自分のすべきことを思い出したか、マリアンヌに「街へお供いたします」と敬礼した。
てっきり馬で行くのかとマリアンヌは意気込んでいたが、用意されたのは豪奢な馬車だった。
その上、マートを護衛にふたりだけで行くものだと思っていたマリアンヌだったが、ベティが「レオン殿下以外の男性とマリアンヌ様をふたりきりにさせるわけには参りませぬ」とやけに張り切り、三人での行動となった。
ピエトーネにいた頃はそれこそひとりで馬を走らせて街へ遊びに行くのが常だったものだから、マリアンヌはなんとも窮屈に感じる。
国民だって、立派な馬車で乗りつけられたら余計に尻込みしてしまうだろうに。
とはいえ、ここでわがままを言ってマートを困らせることはしたくない。マートを困らせるということは、彼を派遣してきたレオンを困らせることにもなるからだ。
(フィアーコの街はどんな様子なのかしら。大国だから、きっと活気に満ちあふれているに違いないわ)
想像を巡らせながら、マリアンヌはおとなしく馬車の揺れに体を預けた。
そうして馬車が止まりマリアンヌたちが降り立ったのは、ふたつの石の塔からなる門のそばだった。ここが街の入口のようだ。