クールな王太子の新妻への溺愛誓約

そこには客待ちの馬車や花屋が並び、とても賑やかに見える。
王族の馬車に気づいた人たちが、遠目になにごとだろうかと囁き合っているようだ。

やはり普段から王族とはあまり深くかかわりあいを持っていないのかもしれない。一向にこちらに近寄ってこないところを見ると、そうだとしか思えなかった。


「こんにちは!」


マリアンヌが元気よく挨拶をすると、みな一様に驚いた様子だった。


「マリアンヌ・アルバーニ・ファロンと申します」


ドレスを摘み、軽く膝を折る。
すると、人々が口々に「マリアンヌ様って、あのマリアンヌ様!?」とそばにいる人たちと顔を見合わせた。

その中のひとりの女性がマリアンヌへと近づいて来た。年齢は四十代くらい。柔和な顔立ちだ。身なりもきちんとしていた。マリアンヌの前に立ち、エプロンドレスを軽く摘んで頭を下げる。


「メイ・ホーリックと申します。失礼かとは存じますが、みなを代表して質問させてください」

「……はい」

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