クールな王太子の新妻への溺愛誓約
「マリアンヌ様、よろしかったら、うちのパンを食べて行かれませんか?」
メイがマリアンヌの手を引っ張ると、そこにすかさず別の手が伸びる。マートの手だった。
「みだりに触れては困ります」
メイの手を振り払おうとするマートに、マリアンヌは「大丈夫よ」と微笑んだ。
「……よろしいのですか?」
「もちろんです。こうして国民のみなさんと触れ合いたくて街へ来たのですから」
マリアンヌが答えると、マートは眩しそうに目を細めた。
「承知いたしました。では、私はすぐおそばにおりますので、なんなりとお申し付けくださいませ」
マートが胸に手を当てて言うと、その後ろではベティも頷く。
「わかりました。よろしくお願いします」
マリアンヌは微笑み、メイに手を引かれるままに歩き出した。