クールな王太子の新妻への溺愛誓約

◇◇◇

その夜行なわれたマリアンヌ歓迎の晩餐会には、大臣や多くの貴族たちも招かれていた。マリアンヌの元へは次から次へと要人が挨拶に訪れ、それはマリアンヌがとても覚えきれないほどだった。

盛大なうちに幕を閉じたその晩餐会の後、マリアンヌはこれから住むことになる宮殿の一室へ案内されていた。
大理石の床には幾何学模様が描かれ、足で踏むことを躊躇うほどに美しい。バラが描かれた豪華な壁紙は、ところどころに金箔が貼られているのか立つ角度を変えると光を放つ。天井は扇形をしており、大きな窓の外は広大な庭が見渡せた。天蓋付きベッドには手の込んだ刺繍の真っ白いレースが掛けられている。

調度品はどれを見てもピエトーネより高級品に見えた。見事な部屋を前にして、長旅の疲れも晩餐会の気疲れも吹き飛んでしまう。

(私、とんでもないところに嫁ぐみたいだわ)

マリアンヌが口もとに両手を当てその部屋に見入っていると、「コホン」という咳払いが背後から聞こえた。ピエトーネから同行してきたマリアンヌの侍女ベティだ。

歳はマリアンヌよりも二十歳上の三十九歳。当初はピエトーネの王妃ヴァネッサ付きの侍女だったが、マリアンヌが生まれたと同時に彼女の侍女として仕えている。
栗色の髪をいつも後ろで緩く束ね、大きな目が印象的な顔立ちだ。

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