クールな王太子の新妻への溺愛誓約
(聞かなかったから教えないなんて。ちょっと意地悪じゃないかしら?)
ついそう考えてしまう。しかし、今ここでベティに文句を言っている場合じゃない。
「いいわ。とりあえずレオン様にお土産を渡してくるから」
ベティには先にマリアンヌの部屋へ戻っているよう伝え、マリアンヌはレオンの部屋のドアをノックした。
かすかに「はい」と返事が聞こえたので、マリアンヌは緊張しつつドアを開ける。
「レオン様、失礼いたします」
中へ入ると、そこはマリアンヌの部屋より幾分か広かった。ベッドやソファなどの配置は同じだが、男性の部屋らしく色のトーンが若干暗めだ。右の壁には、贅沢品の象徴である大きなタペストリーが掛けられていた。謁見の間にあった天井画のように天使が描かれている。
レオンはソファに座って寛いでいるところだった。
「お忙しいところ申し訳ありません。街からただいま戻りました」
「そうか」
レオンは表情を崩さず、もちろんにこりともせず、ただひと言だけ返した。