クールな王太子の新妻への溺愛誓約

今でも面影を残しているが、若い頃は相当美しかったことが窺える。品行方正でヴァネッサの信頼も厚い。

ただマリアンヌにしてみると、もう少しくだけてもいいのにと思わなくもない。とにかくまじめなのだ。そして、時に手厳しくもある。


「マリアンヌ様、あまり呆けて見ていてはだらしなくございます。大国フィアーコの王太子のお妃となられるのですから、もう少しお口もとを引き締めた方がよろしいかと存じます」


ベティは姿勢を正し、胃のあたりで両手を美しく重ねてマリアンヌを諌めた。


「はい」


マリアンヌは顎を引いて唇をきゅっと閉じた。

ピエトーネからただひとり侍女としてここにいることになったベティだけが、今のところは頼みの綱。マリアンヌは、ひとまずは忠告を素直に聞き入れようと思った。


「それでは早速でございますが、このお部屋のご案内をさせていただきたいと思います」

「え? ベティはもう把握しているの?」


マリアンヌが目を見開いて尋ねる。

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