クールな王太子の新妻への溺愛誓約
茫然としているマリアンヌを尻目に、レオンは何食わぬ顔で彼女の横に立つ。その立ち姿の美しさといったらなかった。
ロイヤルブルーのアビは銀糸の刺繍がよく映え、首に巻いたクラヴァットの白さが引き立って見える。
なによりもマリアンヌの心を揺さぶったのは、威風堂々とした様だ。目に見えるはずもないのに、レオンからは神々しいオーラが出ているように感じる。
胸を高鳴らせてその横顔を見ているマリアンヌを現実に引き戻したのは、街のざわめきだった。
視線を移してみれば、多くの人がマリアンヌたちの周りに集まり始めている。街へめったに出ることのないレオンを見て、「王太子殿下よね?」「嘘、信じられない」などと口々に囁き合う。
マリアンヌはその人たちに向かって、軽く膝を折り曲げた。
「先日は、みなさまのおかげでとても楽しい時間を過ごせました。レオン殿下からもぜひにとのことでしたので、本日お連れしました」
マリアンヌのよく通る澄んだ声が響く。
すると、人の輪をかき分けてひとりの女性がマリアンヌたちの前に立った。パン屋のメイだ。
「マリアンヌ様、またいらしてくださり嬉しゅうございます。しかも本日は王太子殿下までご一緒とは。おふたり揃ったお姿のなんて美しいことでしょう」