臆病なきみはうそをつく
「では、先に男子バスケットボールを決めます」


サッカー希望者がジャンケン大会に勤しんでいるのを尻目に、実行委員はさくさくと進行をしていく。


「男子バスケ希望の人は挙手を」


するとサッカーほどではないが、こちらもなかなかの数の手があげられる。

バスケは部活だけでなく授業でもやるし、休み時間に遊びでしたりもするので、親しみやすいところがあるのかもしれない。


実行委員は希望者を確認しながら、ある人を見て、え…と驚いた顔をした。

クラスメイトもみんな同じ方を向く。

私もそう………

手をあげる冬室くんを、驚きながら見ていた。


「…冬室くん、バスケって大丈夫なの?」
「危なくない?バスケ激しいし。
違う学年の人とか、冬室くんのこと知らないから、遠慮しないだろうし」


ぽそぽそと、クラスからそんな声があがる。

冬室くんもそんな空気に気づいたのか、困ったように笑って『無理かな?』とつぶやいた。


その笑顔に私の胸は小さくうずく。


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