臆病なきみはうそをつく
私たちは並んで帰り道を歩いた。

冬室くんはバス通学らしいので、学校近くのバス停までのわずかな距離ではあるけれど。

それでもこうして一緒に帰るのは初めてで、なんだか新鮮だった。

見慣れた風景もちょっとだけ変わって見えるような、そんな不思議な感覚……。


傾きかけた日の、橙がかった光が冬室くんの横顔を照らす。

彼の整った顔が夕暮れ色に浮かび上がり、とても綺麗だと思った。


「……笠原さん、球技大会の練習どうだった?」


冬室くんがこちらを向き、そう訪ねる。

見つめていたことがバレたのかと思い、急に恥ずかしくなった。


「……え、あ……えーと。まあまあ……かな」

「笠原さん、バスケだったっけ?」

「……ん。まあ……」


冬室くん…

本当はバスケに出たかったんだよね。


ホームルームでの出来事を思いだし、なぜか少し気まずくなった。


「……ふ、冬室くんはどうだった?」

「んー。バレーは割とのんびりしてるかな。勝つっていうよりは、楽しくしようみたいな」

「……そっか。いいな……」

「でも僕、バレーは全然できなくて。足を引っ張ってるかも」


恥ずかしそうに、冬室くんが笑う。
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