臆病なきみはうそをつく
「……え」


冬室くんが驚いた顔をする。


(……え)


私も自分の言ったことに驚いていた。


……私、どうしてこんなこと言ってしまったんだろう。

柄じゃない。

スポーツなんて嫌いだし、球技大会だっていやで仕方ないのに。


ただ、……冬室くんが寂しそうだったから。

そんな顔をしてほしくなかったから。


それだけだった。


「……あ、あの冬室くん」

「僕でよければ……」

「え」

「………僕でよければ、教えるよ」

「………」

「笠原さん?」

「え、あ……あの、ありがとう」

「うん。……僕こそ、ありがとう」


それは、何に対してのお礼?


ああ。
どうして、あんなこと言ってしまったのか。

柄じゃないくせに。


でも

冬室くんが嬉しそうに笑ったから、もうそれでいいんだ……なんて思ってしまっていた。

だって笑った冬室くんはとても綺麗だ。

ずっと見ていたいと思うほどに。
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