臆病なきみはうそをつく
正直、抵抗がないといえばうそになる。

知り合いのデリケートなことを、小説のエピソードに使うのだ。

いいことのはずがない。


「……でも、そのまま話にしなければいいんじゃないかな」


ちょっと変えて、冬室くんのことだってわからないようにすれば。

よく身の回りの出来事を元に、小説を作る人も多いってきくし。

これくらいみんなやっていることだから。


「それに……この小説を冬室くんが読んでたりはしないだろうし……」


あの気になるコメントのことが頭をよぎる。


本当は少し確かめたいと思っているのかもしれない。


冬室くんと少しかぶるところのある、コメント。

もし、あれが本当に冬室くんだったとしたら

自分と明らかに重なるエピソードがあれば、何らかの反応をしてくるんじゃないか……と。


「……よし、決めた」


私は小説のなかに、あるエピソードを入れた。


病床の翔太が、かつてバスケ部であったことを告白するシーン。

そして彼は『またバスケがやりたい』と、ヒロインのカレンに打ち明ける。


そんなストーリーを追加した。



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