臆病なきみはうそをつく
「………あ」
バス停で冬室くんと別れ、さあ帰ろうかというとき、教室に忘れ物をしていることに気づいた。
明日提出の課題のノートだ。
まだ終わっていないので、今夜に家でやらないと間に合わない。
(……はあ。仕方ない。取りに行くか)
不幸中の幸いというか、バス停から学校までは5分くらいで、とても近い。
私はしぶしぶながら引き返すことにした。
放課後の静かな学校。
まだ部活中のところもあるが、もう日が傾いてきていることもあり、残っている生徒はあまり多くない。
廊下を少し駆け足に進み、教室を目指す。
やがて目的の教室に到着し、ドアに手をかけるが、ふとその手を止めた。
……中から話し声が聞こえてきたのだ。
(……げ。誰か残ってるの?)
こんな時間までいるなんて、珍しい。
おかげですごく入りにくくなってしまった。
別にやましいことをしているわけじゃないんだけれど
クラスに馴染めていない私に、この状況はちょっと厳しい。
(………でも、仕方ない。パッと入って、パッと出よう)
そう思い、再び手をかけようとしたが
「……えー、笠原さんと冬室くんかー」
聞こえてきたその声に、完全に停止してしまった。