臆病なきみはうそをつく
(………え?私の話?)


鼓動がドキドキと急加速する。

聞かない方がいいとわかっているのに、扉の前から動けなかった。

今のは確かに私の名前。

そして、……冬室くんの。

一体なに?なんの話をしているの?



「……なんか意外だね。あの2人付き合ってんだ」

「間違いないよー。今日も2人でバスケの練習とかしてたし」

「あは。なにそれ、爽やかかよ」



……話しているのは、多分女子が3人くらい。

どうやら放課後、冬室くんと2人きりでいるのを見られていたらしい。


「しっかし、笠原さん意外とやるねー。暗いし、誰とも話さないぼっちかと思ってたのに、しっかり彼氏作ってじゃん」

「でもさー、冬室くんってさー……ねえ」

「わかるわかる。あんま言いたくないけど、ちょっと関わんのしんどいよね。冬室くん自身が悪いんじゃないけど」

「そーそー。めちゃ気を使うじゃん。球技大会もさー、ぶっちゃけ怖くない?教室でもよくぶつかったりしてんのに。球技大会、怪我しちゃうんじゃないの」

「ねー。可哀想だけど、休んだ方がいいよねー。言えないけどさー」


『わかる』の大合唱が巻き起こる。


(…………冬室くん)


私は聞いていられず、課題を取ることもせずにそのまま走り去った。

胸の奥がきしむような、嫌な音がした。


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