臆病なきみはうそをつく
……ああ。やっぱりうそばっかり。
冬室くんの前では彼を気遣ったり、応援するようなことを言いながら
こうして非難して、笑い者にしているんじゃないか。
冬室くんが悪いんじゃないのに。
(……みんな、同じ)
私もそうだった。
中学の時。内気な私にできた唯一の友達。
彼女にだけは何でも話せた。彼女はなんでも優しく聞いてくれた。
……当時の淡い恋心。好きな人の話もした。
彼女は私の不器用な恋を応援すると言い、ことあるごとに励ましてくれた。
『あのね、ーーくんね、日南子ちゃんみたいなおとなしい子が好きって言ってたよ。良かったね』
ある日、彼女はそんなことを私に話して
私はそれを真に受け、密かに喜んだ。
あのときの私は、自分自身を好きになれるような期待に胸を膨らませたものだ。
ーーーでも
それは数日後、あっさり壊れてしまう。
放課後の教室で偶然聞いてしまったのだ。
彼女が他のクラスメイトと話していたことを。
『日南子ちゃん、ーーくんに嫌われていること気づいてないの。かわいそうだよね。あたし、つい、うそついてフォローしちゃったよ。
あの子悪い子じゃないけど、地味だし、顔があれじゃん?
好きになる男子なんかいるのかな』
その言葉は私の中の小さな自信も、プライドも粉々に打ち砕いた。
好きな人に嫌われていたことより、顔がブスだと言われたことより
親友だと思っていた彼女がそう言っていたことが
私にうそをついていたことが、何よりショックだった。
クスクスと馬鹿にしたような笑い声が耳から離れない。
翌朝、何事もなかったかのように話しかけてきた彼女。
私は怒りよりなにより、ただただその子が怖かった。
なぜ、そんな平然と出来るのか。
あれほど残酷な嘘をついておいて。
それなら、もう誰も信じられない。
それ以来、ただでさえ内気だった私は誰にも心を開けなくなり
今のように学校でひとりぼっちになった。