臆病なきみはうそをつく
冬室くんは軽い脳震盪だった。

あれからすぐに保健室で目を覚まし、意識もはっきりしていた。

念のため病院で診てもらうそうだが、多分心配ないだろうとのことだ。


一時は中断されていた球技大会も再開し、女子バスケはなんと一回戦を通過した。

それは、チーム中のバスケ部の力が大きいと思うのだけれど、一応私も奇跡的にシュートを決めたりした。

……冬室くんと練習したおかげだった。


「笠原さん、やるじゃん!ナイス!」

「あ、ありがとう……」

「笠原さーん、いいよ、その調子!がんばってー」


チームメイトとハイタッチしたり、応援してもらったり

自分にこんなときが来るなんて思わなかった。

……でも

もしかしたら、この応援もうそかもしれない。

みんな、内心では私をでしゃばりだと思っているのかもしれないし、やはり下手だと笑っているのかもしれない。

今までずっとそんなことばかりだったから。


「笠原さん……!」

「!」

試合中、回されるパス。

私はそれを受け取り、ゴールを狙う。


(……今は考えても仕方ないか)


それより、このボール

ちゃんとシュートを決めないと。


私はゴールを見据え、シュートを放った。



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