臆病なきみはうそをつく
……冬室くん。


私は彼の腕を取った。

そしてその腕に抱きつくように身体を預ける。

我ながら信じられないような大胆な行動。

冬室くんも、クラスのみんなも驚いたように私を見る。


「冬室くん。わ、私……冬室くんにほ、本当に本当に感謝してる……!」

「え……」

「ふ、負担は私もかけてるよ。バスケは下手だし、その、は、話すの苦手だし……い、いつも暗いし。きっとクラスのみんなにも負担かけているよ」


そう言うと、クラスメイトの数人が苦笑いしながら顔を見合わせた。

恥ずかしくて顔がカアッて熱くなる。


でも、ここで言わないと意味がないと思った。


うそじゃないこともある、と冬室くんは言ってくれた。

私も冬室くんのことは信じている。

そして、きっと冬室くんも私のことを信じてくれている。


でもそれだけじゃ駄目だ。

冬室くんの寂しそうな顔が悲しい。


うそじゃないことはあるよ。うん、きっとあるね。

だから、ここにも、クラスの中にもあるんだと。

あなたに思ってほしい。


「笠原さん……」

「ふ、負担かけることなんて、みんなそれぞれあるよ。大きかったり小さかったりするかもしれないけど。でも、わ、私は、冬室くんが思うほど、あなたを負担とは思わない。む、むしろ私の方がそうじゃないかな……なんて考えちゃうくらい」

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