臆病なきみはうそをつく
「笠原さん……」


冬室くんが目を見開く。

その目に私が映っていた。

そしてクラスのみんなの顔も少し変わっていた。

私が何が言いたいかわかってきたみたいだ。


「そうだぜ、フユ。いろいろあるけどお互い様じゃん。オレらだって、よくフユには世話になるし」

「テスト前とかな」

「そうそう」


冬室くんと普段から仲のいい男の子たちはそう言って笑った。


「……きっと、私たちもそうだね」

「うん。まあ、ね。みんなそういうのあるよね」


他のクラスメイトたちも穏やかな顔でそう言い合っている。

少し照れくさそうに、気まずそうに笑いながら冬室くんを見た。


冬室くんは、みんなの言葉をどう受け止めていいかわからないというように曖昧に笑う。

そして彼に寄り添う私を見つめた。


「……笠原さん。その、なんて言ったらいいかわからないけど」

「……」

「僕は……笠原さんに負担かけられているなんて思ったことないから」

「う、うん……私も」


私もそうだよ。

あなたが抱える不自由。

それがときどき胸を痛めることはあるかもしれない。

でもそれは負担ではない、ましてや迷惑でもない。

それはあなたの一部で、あなたを作るひとつ。

だったら、私はそれをありのまま見つめたい。


あなたが私の欠点をありのまま見て、受け止めてくれたように。

あなたが負担と思うものは、私にとっては大事なあなたの一部。

それがときにあなたや私を縛っても。

一緒に抱えられるようになりたい。

それくらい強くなりたい。

あなたが好きだから。
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