臆病なきみはうそをつく
冬室くんは私の言葉になにかを感じたようだった。

ハッとしたように目を大きくして、それから笑った。

穏やかに、優しく、綺麗に笑った。


ああ。
その笑顔好き。


「……ありがとう」


そう言って、あなたの腕を掴む私の手に触れた。

ひんやりした指先が私の手を包む。

見つめ合うと、気持ちすらも分かち合える気がした。



冬室くんはクラスのみんなを見渡す。

その見えない右目にも映るように。

みんなは笑顔を浮かべていた。


それは本当? 
うそじゃないかな?


そんなことはわからない。 

ここにいるクラス全員が同じ気持ちではないだろう。

私や冬室くんを負担に思い、嫌う人もいるかもしれない。

あの日、聞いた陰口のように。



でもクラスみんながここに来てくれた。

一人で抜けた私を追って

冬室くんのことを心配して。


その行為は本当。

まぎれもない事実。


だから、その気持ちを、笑顔を信じたい。

少なくとも私はそう思ったし、きっと冬室くんもそうだろう。


だから冬室くんはこうして笑っているんだ。
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