臆病なきみはうそをつく
「よし、じゃあみんなで打ち上げいこうか!」
誰かがそう声をあげ、クラス全員でわーっと盛り上がった。
「冬室くん、もう身体大丈夫なんだよね。行こうよ。無理のないように気を付けるからさ」
奥田さんがそう言って、私の方を向く。
「……笠原さんも行くよね?」
そうして意味深に笑った。
冬室くんは穏やかな笑顔のまま「そうだね」と首をかしげる。
「笠原さんが行くなら僕も行こうかな」
「ふ、冬室くん……」
冬室くんの答えにみんながヒューとからかうような歓声をあげた。
「見せつけんなー」
「勝手にやってくれー」
「幸せにね」
なんて賑やかな冷やかしの中、私は冬室くんを見つめてうなずく。
「うん。もちろん私も行くよ……。冬室くんが行くなら」
そう答えると、冬室くんは声をあげて笑った。
その笑い声がみんなの歓声とともに暮れた空へと溶け込んでいく。
色がにじみ寂しそうに冴える空とは対照的に、私たちは明るい笑顔で学校から帰っていった。
冬室くんは私の手をそっと握り、私たちは手をつないで歩いた。