臆病なきみはうそをつく
「………私も」


私も………そうだったらいいな、と思うよ。



何がうそで、何が本当かわからないネットの世界。

そこには、冷たい本当も、優しいうそも確かに存在していた。

私は、いろんなうそと本当に、悩み、苦しみ、ときに歓び、励まされる。


もしかしたら、みんな例外なくそうなのかもしれない。

そしてそれは、現実の世界と同じだった。



「……じゃあ、私……スマホが直ったらまた小説書こうかな」

「うん。それがいいと思うよ」

「応援してくれる?でも、読まれるのはやっぱり恥ずかしいかも」

「応援しているよ、ずっと、ずっと」


冬室くんが私の手を力強く握る。

そこには確かな暖かさと、彼の深い思いがあった。


「……冬室くん」

私はそっと彼に寄り添った。

自分でも驚くほど大胆な行為。

でもこのときは自然にそうしていた。

冬室くんの暖かさが嬉しくて、そんな彼をとても愛しく思ったから。


冬室くんは少しビックリしたみたいだったけれど。

そのままそっと私を抱き寄せてくれた。


全身で暖かさを感じた。

悲しくないのに、幸せなのに、胸が苦しくて、鼻の奥がつんとする。

これが、誰かを好きだということなのかな。

だとしたら、なんて痛くて、なんて幸せなんだろう。


このとき、私は幸せだった。

そして、あまりに盲目だった。


冬室くんと違って、両の目が見えているくせに。

正しいことなど見ようとしていなかった。


冬室くんの、優しいけど、少し寂しそうな笑顔に気づいていなかったのだ。



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