わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
episode4 整体(1) 浄化

その昔、わたしがまだ姫と呼ばれていたころの話。

そのころ、新しく紹介してもらった整体の先生は、それまでのどの先生とも違っていた。
だいたい、うつ伏せから始まって、仰向けになる。場合によって、横向きになることもあるけれど、からだだけで終わるのが常だった。

それが、その先生は頭も施術してくれると言う。
一日ひとりだけ、という完全予約制のせいか、予約は1年先までいっぱい。
しかも、初回は誰かの紹介がないと、受けられない。
噂を聞いて、1年間待ち続けてようやく、その日を迎えた姫。

最寄駅からの簡単な地図を頼りに歩くこと十分くらい。そのサロンは住宅街にひっそりとあった。
看板もなく、サロン、というより普通の家のような感じ。隠れ家っぽいところがいい。
チャイムを鳴らすと、スキンヘッドの渋いおじさま先生が現れた。



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