わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
episode5 整体(2) フランキンセンス
「わかりました。では、楽にしていてくださいね。もし、途中で何か嫌な感じなどあったら、すぐに言ってください。こちらで気がついたときは、さきほどのようにお声かけしますので」
先生の声は、とても慈愛に満ちていた。
「はい、お願いします」
先生がベッドの左側から、姫の頭の上のほうに移動する気配が感じられた。
フランキンセンスの香りが、ふわっと舞った。
「先生、さっきよりフランキンセンス、強く感じますけど」
「ええ、あなたがもっとリラックスできるように、少しだけ今足しました」
「そうだったんですね。とても落ち着きます」
「良かった。では、始めますね」
「はい」