わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
「45キロくらいちゃう?」
「え?」
「姫、45キロくらいやろ?」
「体重のこと?」
「うん」
「もうちょっとある」
「エエの。ボクのハカリが、そうゆうてるし」
それまで、もがいて力の入っていた姫の全身の力が、するんと抜けた。
「おっ。もすこし、かるなったな。42くらいか」
抱っこされていた姫の肩と腿が、男の厚い胸のほうへ、ぎゅっと抱き寄せられた。
覗きこんだ悪戯っぽい男の瞳が笑っている。
お姫さま抱っこも、悪くない、と姫は思った。