わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
episode6 元旦

その昔、わたしがまだ姫と呼ばれていたころの話。

そのころ、年末年始になると、居場所がなかった。
働いている独身の友達はみんな仕事納めが終わると、それぞれ実家に帰って行った。

わたしは実家に帰るほどの休みが取れなかったことと、帰ったところで大して面白いこともなかったので、いつも一人暮らしのマンションで過ごしていた。

ひとりぼっちのクリスマスが淋しい、なんて言うのは実家暮らしの者だけだろう。
実際、クリスマスにひとりでいることなんて、お正月にひとりきりでいることを思えば、なんてことなかった。

元旦、みんながご来光を有難がっているころには、もう職場にいた。
ホテルは年中無休。お正月を楽しむ家族連れのお客さまに「おめでとうございます」と、にこやかに振り袖姿で微笑む。

「いかがですか」と、ロビーでお屠蘇を勧める。
隣にいる支配人も、今日はスーツではなく、袴姿でお屠蘇サービスに努めている。


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