わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
少しお客さまが途切れたころ、支配人が言った。
「ご苦労さん。少し休憩してきていいよ。ずっと着物だと疲れるだろ」
「ありがとうございます。ハイ、慣れなくて……。でも、振り袖を着られるのはうれしいです」
正直な気持ちだった。
「では、少し頂きます」
「うん、ゆっくりしてきていいよ。もうすぐお昼だから、そのまま昼休憩に入っていいよ」
「大丈夫ですか」
「ああ。お屠蘇サービスは午前中だけだから」
「はい、ありがとうございます」