わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
episode7 新年会
その昔、わたしがまだ姫と呼ばれていたころの話。
そのころ、勤めていたのはシティホテル。
ときどき、セクション異動があり、オペレーター室勤務になって数か月、というころの出来事。
「ありがとうございます。ホテル……」
「あ、姫? あたし、リナ」
いつもお客さまからかかってくる前提で電話を受けるので、枕詞のような「ありがとうございます」に続く、ホテルの特徴的説明を言う前に、かけてきた相手が従業員なら自分の名前を名乗ってくれる。
これは、オペレーターに最後まで言わせるのも申し訳ないし、また時間の無駄でもあるから、ということで暗黙のルール。