わたしがまだ姫と呼ばれていたころ
声の主は、従業員のリナ。
わたしがオペレーターに来る前まで、一緒のセクションで働いていた同期。
「リナ? どうしたの」
「ケータイにかけたら留守電になってたから、こっちにかけたほうが早いかなと思って」
「こっち、ってね。これ、ホテルの代表電話でしょ。今、仕事中なのよ」
声をひそめて話していたけれど、隣の席の先輩が、かかってきた電話のお客さまと会話しながらもチラッとこちらを見たのがわかったので、回転イスをくるっと回して慌てて背を向けた。